選者からのメッセージ
選者:松平 盟子(代表)・難波 利三・望月 善次・小西 美根子
難波 利三
短歌は内容と同じぐらい、三十一文字のリズム感も大切です。字余りや字足らずでは調子が狂うし、ただ素直に言葉を並べるだけでは伝えたい気持ちが弱くなります。 見たことや思ったことを、どのように組み立てて表すか。そこに自分だけの、ちょっとした工夫が欲しいのです。できれば誰にも真似されない工夫が。沢山作っているうちに、それは分かってくるでしょう。これからもどんどん作って楽しんで下さい。
望月 善次
短歌は日本語の特徴に基づいた五音、七音を原則とした五七五七七の五つの積み重ねによる「世界でも易しい詩歌」の一つです。音の数の制約しかないからです。だから、短歌には気楽に取り組むのがよいのです。みなさんの今回の「青春短歌」への応募が、短歌に気楽に取り組むことのきっかけになってくれると嬉しいですね。堺市に縁のある与謝野鉄幹・晶子や(その弟子の石川啄木たち)の作品も併せて読んでくださると更に嬉しいですね。
松平 盟子
私が担当したのは小学生と高校生。年齢で言えばわずかに数年の差が、表現のありようや精神的な成長の度合いにおいてこれほど違うものかと驚かされました。一方で、子供たちの日々の体験はとても新鮮なのだな、との羨ましさも感じました。 短歌は五七五七七のリズムを持つ短い詩です。季節や自然・学校生活・家族などをていねいに観察し、具体的な言葉で心を伝える。それが大切です。これからもどんどん思いを短歌に乗せてみてほしいな、そう期待します。
小西 美根子
中学生の応募がほとんどなかったのがとても残念。そんな中で夜間中学の生徒さんの、学ぶことへの熱意や楽しさが素直に表れた歌に好感が持てました。鄭さん、疲れた体も心も電車の中で気持ちを切り替える。それを車窓に映る自分の顔で確認しているのだ。由良さん、すべてひらがなで字足らずではあるが、この表記にこそ年老いて学び得た喜び、短歌を作れた楽しさがあふれ出ていると思います。
優秀作品
〜小学生の部〜
与謝野晶子倶楽部賞(難波利三 選)
あの人のがんばる姿見ているとドキドキしてる不思ぎな気持ち
国際啄木学会賞(望月善次 選)
不思議かな会話してたら君の目に大きい私が遊んでいるのは
柳谷 苗季(堺市立上神谷小学校)
選者賞(松平盟子 選)
桜咲き大人に近づく春の日に影がいつもより大きく見えて
北 暉(堺市立平尾小学校)
〜中学生の部〜
山登り進むよ道を確実に目指すは一つ明るい光
桐井 菜々子(堺市立晴美台中学校)
トタン屋根貧しき音よ雨の音今学びやに降る雨やさし
゙澤順(堺市立殿馬場中学校夜間学級)
選者賞(小西美根子 選)
仕事終え電車に乗り込み映る顔きりりとしまり夜中生になる
鄭 玉英(堺市立殿馬場中学校夜間学級)
〜高校生の部〜
桜色散る散るなかで君を知る次の春には笑い合えたら
竹村 優太(大阪府立三国丘高等学校)
吹き抜ける風の冷たさ身にしみる悴む指と触れ合う手と手
大和 永幸(大阪府立泉陽高等学校)
二年前使わぬ荷台取ったから君に漕がせて僕は歩こう
中村 颯太(大阪府立泉陽高等学校)
入選作品
けしごむはえんぴつがかくものをけす命けずられながらけします
有木 真波斗(堺市立金岡小学校)
大なわで心を一つにつながって達成感を感じられた日
大岩 雪乃(堺市立城山台小学校)
ふけば草がゆれるよ花も葉も小鳥ないたら春は来たよね
栄田 岬桜咲(堺市立登美丘東小学校)
すべれたな板を「ハ」の字にまた一つ思い出が増えたスキー体験
下垣 和咲(堺市立福泉中央小学校)
反抗期北風が吹き家出して家に帰ると鬼母がまつ
岸 七斗(堺市立登美丘南小学校)
きょうりゅうよ化石になったきみたちを博物館でだいかんげいだ
山上 真雄(堺市立八田荘小学校)
うそつくなわたしのいちご食べたでしょケーキの上にいちごがないよ
能勢 真由美(堺市立金岡小学校)
寒い夜コンロの火をつけ具材出し多めに作り母待つぼくら
近藤 洸央(堺市立新浅香山小学校)
としおいてまなぶたのしさかんしゃしてまごにじまんのはながさく
由良 勝子(堺市立殿馬場中学校夜間学級)
よし読むぞ勇んで読むも皆詰まる予想通りの桐壺源氏
岡本 慎平(大阪府立泉陽高等学校)
ダンス部のみんなで行った夏祭り花火がきれいできゅうり上手くて
岩橋 彩(大阪府立泉陽高等学校)